駆 動 輪 。

その脚を、ゆっくりと前へ。

その、天高くウマ肥ゆる秋の大地で……(4)


ビックレッドファームにはゴールドシップのみならず、多くの種牡馬や功労馬が暮らしており、その姿を見ているだけで時間はあっという間に過ぎていきます。こちらはおしっこしている功労馬のコスモバルク

ここでふと時計を見ると14時40分。すでに見学開始から2時間ほどか経過していまし…あっ!!!!!!!!次の目的地の見学って15時までじゃん!!!!!!!!!!!

 

ということで静かにすたすたと場内を移動して爆速で車に乗り込み発進。ナビ上では次の目的地まで15分。ギリギリ間に合うかどうか。

 


ギリギリ間に合いました。時間は14時57分。もちろん安全で良識の範囲で車を飛ばしました。しかし札幌などの都市圏を除いた北海道は道もまっすぐだし信号がないのでストレスフリーな運転ができていいですね。

こちらは新冠町の白馬牧場さん。競走馬の育成や休養馬管理、種牡馬繁養などを行っている牧場さんです。放牧されているお馬さんたちに会いに来た…と言いたい所ですが、関係者さんに見学の旨をお話して足を運んだのはこちら。

 


敷地の端にあるいくつかの石碑。そして多くの花が手向けられている石には”テイエムオペラオー”の文字が刻まれています。

当然ながらテイエムオペラオーとは元競走馬ですが、競馬を知らない人には馴染みのない名前かもしれませんし、競馬は知らないけどウマ娘はプレイしているトレーナーには『ゴールドシップに負けず劣らずのちょっと自己肯定感が強いウマ娘』という印象が強いかもしれません。

しかし、競馬を知る人たちの中では”オグリキャップディープインパクト、アーモンドアイらに並ぶ”最強”の称号を手にした競走馬”と言い出す人がいるかもしれません。

 

競走馬における”最強”とはなんなのか。これは競馬ファンの中で度々議論になり、同時に永遠に結論がでない話題です。

無敗の三冠を成し遂げたシンボリルドルフディープインパクト、コントレイルは当然最強でしょうし、距離別でみれば短距離のサクラバクシンオーロードカナロア、長距離ならメジロマックイーンゴールドシップだって結果を残しています。先日、惜しくも引退した障害馬のオジュウチョウサンだってJRAの公式ポスターで”王者”とまで謳われていました。結果が残せなくても短い活躍時期で多くの人に夢を可能性を見せたアグネスタキオンや、ちょっとマニアックな話になりますが芝・ダート、中央・地方・海外・距離を問わず勝利を挙げたアグネスデジタルだって見方を変えれば最強かもしれません(アグネスデジタルを管理した白井調教師が最強という意見は満場一致するかも)。

 

対してテイエムオペラオー。現役当時はGⅠを7勝。獲得賞金ランキングでも18億弱を稼いで2022年現在はアーモンドアイ、キタサンブラックに次ぐ3位。確かに強い。結果を残している。しかし最強とまで言えるのか......競馬を追い始めた頃の私はそんなふうに思っていました。

では、テイエムオペラオーが最強のサラブレッドの一角に数えられる所以はなんなのか。

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動画をご覧になっていただいた通り、2000年は天皇賞(春)宝塚記念天皇賞(秋)ジャパンカップ有馬記念古馬王道を含む、年間全勝という偉業を成し遂げました。

年間無敗となれば、例えば1年に1試合だけ出走しそのレースに勝てば事実上の年間無敗でしょう。しかしテイエムオペラオーは計8つのレースに出走し、これをすべて勝利したのです。徹底的にマークされたGⅠとGⅡで勝利といえば、その凄さが際立つでしょう。

また出走ローテーション的にも、現代では馬の休養が大事だと出走レースを絞る陣営がほどんどの中で、天皇賞(秋)ジャパンカップ有馬記念という過酷なローテーションをこなしての勝利。当時こそ稀に出走する競走馬はいましたが、現在ではまずありえないでしょう。古馬王道と呼ばれるGⅠレースに大阪杯が加わったことで、古馬王道をすべて出走するという馬はテイエムオペラオー以降でてきていません。いや、キタサンブラックが2017年に古馬王道を皆勤してましたね。でも6戦4勝、全勝とはなりませんでした。

無敗の三冠馬も当然すごいことなのですが、誕生古馬王道を皆勤し年間全勝する馬は上記の理由から今後出てこないだろうと言われています。これがテイエムオペラオーを最強に数える理由です。

ちなみに先ほど説明した獲得賞金ランキングですが、テイエムオペラオーの約18億円という数字には秋古馬3冠達成の推奨金2億円が含まれておらず、これを合わせると20億円を超え、かのアーモンドアイの19億を抜いて国内1位というおまけつき。

 

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テイエムオペラオーの代表的なレースと言えば、やはり2000年の有馬記念でしょう。年間全勝がかかった大一番、ライバルから類を見ない徹底マークで最終コーナーを馬郡のど真ん中で回ってきて、誰もが『負けた…』『もう無理だ…』と、鞍上の和田竜二騎手ですら『ダメだ…』と諦めた中で、テイエムオペラオー自身が隙間を縫ってあがり先頭でゴールを駆け抜けた一戦。これを見ずしてテイエムオペラオーの事は語れません。

ちなみに私は和田竜二騎手とテイエムオペラオーの絆にまつわる話を知ったことで、この動画を見るたびに自然とガチ泣きしてしまうようになりました。電車内でも、職場でも、ベッドの中でも泣きます。ボロボロ泣きます。ヤベー奴です。見すぎて実況も暗記してしまいました。

 


競馬ファンなら誰もが夢をみたことがあるでしょうし、誰もが夢を見せてもらったことでしょう。現役当時を知らないので本来のニュアンスとは異なりますが、私にとってテイエムオペラオーは夢を見せてくれた名馬の一頭であることは間違いありません。だからこそ、今回お墓参りしたいと思って白馬牧場さんにお邪魔させていただきました。