その、天高くウマ肥ゆる秋の大地で……(3)
優駿メモリアルパークを後にして、次に向かったのはビックレッドファームさん。
繋養種牡馬を持つ生産牧場の中でも指折りの規模と知名度を持っており、競馬に詳しい方ならご存知”マイネル軍団”総帥の岡田繁幸さんの牧場です(正確には岡田繁幸さんの奥さんが代表を務めている)。
見学可能な生産牧場は他にも何件かありますが、初手でここに来たかった理由は地理的問題や時間の都合だけではありません。
見学のルールに則って場内を歩いていくと、一か所だけ人だかりが…。
人々の視線の先にいたのは、白く巨大な馬体。
GOLD SHIP
コチラの動画を見てもらえれば簡単にゴールドシップという馬のことを知ることができますが、もう少し詳しく書くのなら…
①父ステイゴールド(黄金旅程)、母父メジロマックイーンという中~長距離に特化した血を受け継ぎ、その卓越したスタミナでGⅠを6勝。
②レーススタイルは序盤こそ後方でまったり→他のウマがけん制しあうゴール手前800mからのロングスパートで先頭集団に食い込み→他の馬たちがスパートする頃には更に速度をあげてゴールへ飛び込む”超追込み型”。
③とにかく印象に残るレースが多い。最後方からいつの間にか2番手に進出していた皐月賞、淀(京都競馬場)のタブーと言われている第3コーナー手前の上り坂からスパート、最後方から大外をまくって先頭集団をごぼう抜きした有馬記念、かと思えば珍しくスタート直後から先頭集団に食らいついていった宝塚記念、3度目の正直でゲートインをゴネにゴネたと思ったらゴール手前1000m以上を残して超ロングスパート、史上初同一平地GⅠ3連覇の偉業を目前にスタートで立ち上がり出遅れて120億円の関連馬券を紙くずにする…など。
④とても賢くて繊細。故に気分屋。気分次第で走ったり走らなかったり。
⑤その圧倒的強さと愛すべきキャラクターで春秋グランプリのファン投票は常に上位
...と、2010年代を代表する競走馬の一頭といっても過言ではありません。ゴールドシップが気になってウィキペディアやニコニコ大百科を読みだしたり、実際のレース映像をみてしまえば貴方もきっとゴールドシップのファンになる事間違いありません。
自分がスターホースであることを自覚しているので、必ずと言っていいほどファンサービスをしてくれます。今日も柵に噛みついてかわいらしい姿を間近で見せてくれました。
競走馬から引退して種牡馬になってからも何かと話題を提供し続けるゴールドシップ。ついには美少女化されスマートフォンゲームにまで登場しました。ご存知、ウマ娘~プリティーダービー~です。
私はウマ娘から競馬に興味を持ったライトなファンだったのですが、いまではウマ娘に負けず劣らずの愛情で現役や引退をしたサラブレッドを愛してなりません。スマホのシリコンカバーにも馬の絵があるものを購入しました。
ウマ娘にも登場する他の競走馬にも魅力的な子は沢山います。サクラバクシンオー、テイエムオペラオー、アグネスデジタル、キタサンブラック…と、名前を上げたらきりがありませんが、その中でもゴールドシップには強く惹かれていて、今回の渡道に際して是非とも一度会ってみたいと思い、旅行のメインに日高地方を選びました。
ビッグレッドファームさんには、ゴールドシップ以外にも数多くの種牡馬がいます。
こちらはゴルシと同じ白い馬体ですが”ジョーカプチーノ”君。
『なんだかマンハッタンカフェみたいな名前(カフェ=カプチーノを連想)だなあ』と思ってスマホでジョーカプチーノ君の血統をみたら父がマンハッタンカフェでした。
あれ?マンハッタンカフェって青鹿毛じゃね????なんで葦毛????と思ったら母のジョープシケが葦毛でした。なるほど。
コチラは日向でお昼寝中のローゾズインメイ。日本ではなくアメリカのサラブレッドですので競馬ファンでもあまり馴染みがないかも。
なかなかこっちに来てくれない、アドマイヤマックス君などなど。
こちらは種牡馬たちの馬房。現在は感染症拡大防止の観点から立ち入り見学ができませんが、柵の外から覗くことはできました。
感動したのはここ。ゴールドシップの馬房ですが、その下にもう一つ札がかかげられていました。STAY GOLD(ステイゴールド)、ゴールドシップのお父さんです。
ステイゴールド(黄金旅程)は、かつて人々に夢と元気と少々の笑いを届けてくれた競走馬でした。ラストランとなった香港のレースで悲願のGⅠ勝利。誰かが脚本を書いたのではないかと疑っても可笑しくないほどの笑いと感動で競馬界を席巻し、大団円でステイゴールドの競走馬生活…黄金旅程の第一幕が幕を閉じました。
種牡馬生活となった黄金旅程の第二幕もドリームジャーニー、ナカヤマフェスタ、オルフェーブル、フェノーメノ、オジュウチョウサンなどといった個性的で魅力的で実力を備えた子供たちに恵まれ、これから益々楽しみだと競馬界が盛り上がっていた矢先に亡くなってしまったステイゴールド。
突然の幕切れとなってしまった黄金旅程の第二幕でしたが、第三幕は子供たちがしっかり跡を紡いでいます。そして、その紡ぎ手の一人がゴールドシップ(黄金船)です。
文字通り父の跡を継いだゴールドシップは、これからも日高の地から競馬界を賑わせてくれることでしょう。